6回目の退院
8月末からの記憶があまりない。
母の入退院を繰り返し、その全てを私1人でやってきた。
外来に連れていくのも、医師から説明を聞くのも、心肺蘇生はしないという同意書にサインをするのも、入退院の手続きも入院費も、毎日のお見舞いも、親戚周りや冠婚葬祭も、全部1人でやってきた。
少しずつ疲れは溜まってる。だけど頑張ってきたし、大丈夫だった。
母が頑張っていたから、弱音を吐かなかったから。
薬の副作用で手足の力が入らない狭い意識の中、母はとても深く傷ついているんだと思う。
なんとか1人でポータブルトイレにうつってたけれど、転んでしまって、ポータブルトイレは近くに置いておけなくなった。
力が出ず朦朧としてるためオムツをすることになった。
どうやって諦めたらいいの?
と母は看護師に聞いたそうで、その言葉がとてもショックで忘れられない。
仕事ができなくなって、家事ができなくなって、入浴ができなくなって、トイレに行けなくなって、1人で歩けなくなって。
ベッドに足をひょいとあげることもできない。まだ60歳なのに。
何かしたいことありますか?と聞いた看護師に、何かしたいことあるかなんて聞いたら怒るよと返した母。普段はそんなこと一言も言わないのに。母は、どうすればいいかわからなくて、どうにもならないこともわかってて。
その中でもがき苦しまなければいけないのは、なぜ?
一日中ベッドの上にいる辛さ
思うように身動きとれない、動きたいのに動けない
イライラして発狂するのは、当たり前だよ。
死んだ方がマシ、早く死にたいって。
そうだよねと思いながらも、受け止められない幼稚な娘。苦しい、吐きそう、頭がおかしくなりそう。
11月27日
昼間に、とあることで思い通りにいかないことに対して母が泣いた。
その涙には、色んな思いが含まれていたんだろう。少しでも穏やかで苦しくない時間を過ごしてもらいたい。
ここにきて、身体面の苦痛だけでなく、精神面やスピリチュアルペインの恐ろしさを強く感じている。
苦しい
誰か一緒に頑張ってくれないかなぁ。
1人じゃ、受け止めきれないよ。
眠りたいんだろうね
他人なら、理解してあげたいという優しい気持ちが働いて思うようにさせてあげられるんだろうな。
痛い思いをしないためには眠ること
眠っていれば痛くない
強い強い鎮痛薬を使って、どんどん増えていって、1日のほとんどを寝て過ごす。
それでいいはずなのに、娘としてはなんだか苦しいんだよ。
いつも怒ってるお母さん、いつもテレビ見て笑ってるお母さん、いつもパワフルに仕事してるお母さんを見てきた私は、眠っている、活気のないあなたを見るのが、なかなか辛い。
痛みは主観的なもの、どれだけの苦しい思いをしているのだろう。
それなのに、色々な思いが相まってなかなか笑顔を見せられない私。
息をして、苦痛のない表情で、いつまでも隣にいてほしいな。
3日目
3日目
青い空 白い雲
入院2日目。
血圧も下がって、尿量も増えて、咳も少なくなって、吐き気もなくなって。
いい感じ。
窓から見える景色は、台風が過ぎたあとの青い空と白い雲。
右にゆっくり流れていく。
蝉が一生懸命にうたってる。
明日も明後日も元気で。